ノーマルブレーキの効きに大きな不満を感じ、納車後約400キロほどでフロントのパッドのみを交換しました。ブランドは、DELPHI Lockheed(旧ap Lockheed)のタイプZC。価格は3,2万円。交換してみますと、制動力とコントロール性以外は全て無視して設計されただけあり、効きはノーマルパッドの比ではありません。とにかく制動の立ち上がりが早いので、ABSが制御を開始するのが間に合わず、タイヤが一瞬ロックしてしまうほどです。

 

1 クレブレーキクワイエット & カド落とし

 効きには大満足ですが、その代償として「ブレーキ鳴き」の大きなおまけが付いてきました。薄くモリブデングリスを塗っただけの状態では、軽く踏んだ状況で「キィィィィーーーン」と近所迷惑甚だしい、すさまじい音です。とても街乗りできないレベルなので、何かいい用品はないかと近所のオートバックスに行くと、「クレ ブレーキクワイエット」なる鳴き止め剤を発見しました。1個980円也を買い、さっそくパッドの裏面全体にベタベタッと塗り装着。それにしてもこの鳴き止め剤、何ともいえないヒドイ臭いです。カー用品店で見かけたら、簡単にキャップが外れますので、一度臭いをかいでみてください。で、この商品はドロドロッとした真っ赤な接着剤のような形状で、乾くとブチルゴムようの弾力性に富んだ固体に変化します。つまり、グリスのように潤滑して摩擦をなくしてしまうのではなく、パッドとピストンの間にクッションとして介在し、鳴きを止めるもののようです。

 さて、結果はといいますと、塗布してしばらくは鳴きが治まったのですが、数十キロ走行すると再発し、その後は徐々にひどくなる一方です。(ブチルゴム状態の剤が、ピストンの力によってせん断され、介在しなくなったと思われます。)そんなとき、ある方から、「カド落としやった?」とアドバイスをいただき、さっそくバラして鉄ヤスリでパッドの全周をガリガリと削りました。さらにバラシついでに、パッドの裏と耳の部分にブレーキクワイエットをたっぷりと追加。で、走り出すと…、ガーン! 前より鳴きが大きくなってしまいました。

 

2 リキモリ 鳴き止めグリス 

 156のパッドにブレーキクワイエットは不向きと判断し、今度はカルグ(カー用品店)で「リキモリ ディスクパッドグリース」(1000円)を購入。結果、クレと比べると、鳴きは2、3割くらい改善しましたが、まだまだひどいレベルです。その後、峠を攻めに行ったら鳴きが一層大きくなったので、バラしてみたところ、一部グリスが熱で蒸発してました。

 

3 住鉱 ディスク鳴き止め剤

 オートバックスとカルグには他に鳴き止め剤は置いてありません。そこでイエローハットに行きますとありました。住鉱潤滑剤という会社のスプレータイプ鳴き止め剤。1700円(スーパーオートバックスでは1980円)と少々高いですが、塗布はブレーキをバラさずにできて簡単。左右前輪のパッド側面にスプレーして試運転開始。何てこった! ブレーキ全然効かへん。この商品、摩擦係数を調整して鳴きを止めるとありますが、ようするにちょっぴり潤滑しちゃうワケですね。5回くらいやや強くブレーキを踏むと効きは戻ってきますが、やっぱり少しマイルドになった感じ。でもスバラシーことに、鳴きは全滅! です。どんな踏み方しても全く鳴かなくなりました。ばんざーい! と喜んだのは1週間くらいでした。塗布した粉がとんでいくのにつれて、徐々に効きが戻ってくるのですが、それと一緒に鳴きも戻ってきてしまうのです。距離で計れば50〜100キロくらいでしょうか。一時的な対症療法であって、病原を断つ治療法ではありませんでした。(でも効くことは確かです)

 

4 スリット入れ

 WEBであちこち検索すると、ブレーキ鳴きにお困りの方は結構多いようですね。どういうわけかインプレッサとレガシィのサイトによく行き当たります。インプレッサなんか、普通のシムとコーティングシムと2枚シムが入っているのに鳴くんですかね? それはともかく、パッドメーカーのページに、「スリットを入れるのも効く」とあるのを見つけました。フェロードなんかだと初めから入っている縦方向の溝のことです。で、これもやってみました。グラインダーを使って幅2〜3ミリのスリットを切り、念のためスリットのカドにはヤスリをかけました。(これやるためにわざわざグラインダー買ったのですが、よくよく考えるとこれまでの出費で別なパッドが買えたかもしれません。トホホ……。)はい、それでは結果です。音質が変わりました。半音上がった感じです。音量は一緒です。これなら、あとスリットを5〜6本入れれば、鳴きの音が可聴帯域を超えて、聞こえなくなるかもしれません。おしまい。

 

5 結論

 他にもいろんな対策をやってみたのですが、結局鳴きを止めることはできませんでした。またパッドの裏にグリスを塗る手法以外は、どれも多かれ少なかれ、パッドの本来持つ制動力とコントロール性を損なうものばかりです。これでは何のために高価なスポーツパッドを買ったのかわかりません。それでは結論です。「ブレーキ鳴きは効く証拠。気にせず乗ろう!」 おそまつ。

 

追記(03/01/19)

納車後約1年経過しましたが、ここ半年ばかりクレの「ブレーキクワイエット」を使っていたところ、ピストンのパッドとの当たり面に錆が発生してしまいました。錆を防ぐ意味でも鳴き止めグリースの方がおすすめできます。

左から
リキモリ パッドグリス
住鉱 鳴き止めスプレー
クレ ブレーキクワイエット
スリット加工は、手間がかかる割に、大きな効果はありませんでした。

ブレーキ鳴き対策その後                       2005/09/28 UP

 

サーキットもOKなスポーツパッドは大なり小なり鳴きが発生するもののようです。さらに156の場合は脱着式のシム(鳴き止めのための金属板。ピストンとパッドの間に挟んで装着する)がないため、鳴きはより発生しやすいものと思われます。(※純正パッドはパッドの裏面に樹脂製シムが接着されています。ですが、私の知る限り、アフターパーツのパッドにこうしたシムの装備はありません。)
シムがないということは、ピストンとパッドは金属同士で直接接触することになります。フロント側ピストンは開口部側でパッドと接するので、接触面積はごくわずかしかありません。このため、クレ社の固体鳴き止め剤(クレ・ブレーキクワイエット)はほぼ完全にせん断され、かつ固体ゆえ復元しないので鳴き止め剤としての役割を果たさなくなります。通常の鳴き止めグリスも、制動時、ピストンとパッドの間から押し出されてしまい、鳴き止めの効果はかなり低下するものと思われます。

そこで購入したのが、このワコーズ・ブレーキプロテクター。実売価格は4200円と通常タイプに比べ4倍近く高価ですが、強い粘度で押し出される力に対抗し高い鳴き止め効果を発揮するという効能書きに惹かれ購入しました。塗布してみると、確かに粘度の強さがわかります。今まで使ったブレーキグリスは、粘度については通常の潤滑用グリスとそれほど変わらず、ティッシュで拭い取れるほどでしたが、こいつはグリスというよりは硬化途中の接着剤のような感触で、べっとりしていて引くと長く尾を引きます。

さて、効果ですが、現在までのところ鳴きはわずかしか発生していません。但し、今回パッド(プロジェクトμ HC+)交換と同時に塗布したため、グリースが鳴きを抑えているのか、パッドそのものが鳴きにくいのかの判別がつきません。ということで、紹介しておきながら効果の報告をできずスミマセン。現在鳴きに困っている方、パッドはそのままで試してみませんか? 多分通常のパッドグリスよりは鳴き止め効果高いはずです。

なお、耐熱温度900℃となっているとおり熱には強く、サーキット走行後も粘度や色に変化は全くありませんでした。