2005/08/12UP

使用工具 鉄ヤスリ、ドライバー

使用部品 バイク用リザーバータンク、耐熱・耐油ゴムホース(内径8ミリのもの、4〜5センチ)、直径約8ミリの金属丸棒1〜2センチ、ホースバンド3個、自在ステー約15センチ、ブレーキフルード若干、ウエス

いじくり時間 90分

いじくり費用 3000〜4000円

難易度 B(A難〜D易)

 

今回はちょっとメイニアックないじくりです。156のクラッチフルードリザーバータンクは、ブレーキフルードと共有です。共有であること自体に特に問題はないのですが、ペコーさんからいただいた情報によると、クラッチフルードの交換にサーキット走行用の高沸点タイプフルードを使用したところ、クラッチの動きが渋くなり、異音が発生するようになったとのこと。ブレーキ側には問題ないそうなので、クラッチピストンのシールゴムが、ブレーキキャリパーピストンのシールゴムよりフルードに対する膨潤性(フルードがゴムに浸潤しゴムが膨張すること。最悪の場合ピストンが固着して動かなくなる。ブレーキ側でこれが起こるとピストンが戻らなくなってブレーキが引きずる)が低く、劣化しやすいために起きたものと思われます。したがって、ブレーキフルードに高沸点・高性能タイプを使っていて、クラッチフルードを交換しようと思ったら、ブレーキ用とクラッチ用とでタンクを分けた方がいいことになります。(ポンプで一度タンク内のフルードを吸い出してやればできないことはありませんが、若干量の混入は避けられません。)

フルードについて少し調べてみましたが、規格はDOTの他、国内JISによるものもあって複雑です。非鉱物油系のフルード(鉱物油系フルードは一部のレーシングマシンにしか使われていません)には、主としてグリコールエーテル系、ホウ酸エステル系、その混合系があり(シリコーン系もありますが、これも一般には使用されません)、さらに同系でも組成が異なるものが多数存在するようです。ここにさらに添加剤が加わるので、何系がゴム膨潤性が高いかは一概には言えないようです。ただし、高沸点と高レスポンス性に的を絞ったレース専用フルードの中には、シールゴムの交換を前提にしたものもあるようですから、クラッチ側に使うのは避けるべきです。

 

※DOT4でJIS規格も通っているフルードをお使いの場合は、クラッチ側に使っても問題ないと思いますので、タンクの別対化は必要ないと思います。

左の2本がブレーキ用、右の1本がクラッチ用です。但し、年式、グレード等によって異なるかもしれません。確実に確認した上で作業してください。

まず純正タンクのクラッチ側差し込み部を殺すための栓を作ります。私は、短く切ったホースの片側に金属棒を差し込みホースバンドで締めて栓にすることにしました。金属棒を差し込む際は、フルードを塗ってやると潤滑油代わりになってスムースに差し込めます。ホースは純正と同じものを入手できればベストですが、大型ホームセンターで耐熱100℃、内径8ミリの耐熱耐油ゴムホースを見つけたのでこれを購入して使いました。1mで750円でした。なお、今回の作業前に、一時的に非耐熱の耐油ホース(耐熱〜60℃)を使用したのですが、わずか3週間ほどで白濁して柔軟性がなくなりました。そのまま使っていれば、数ヶ月程度で劣化してフルード漏れを起こしただろうと思われます。耐熱性の低いホースをエンジンルーム内に使用することは避けましょう。

金属丸棒は直径約8ミリなら何でもいいと思います。私はこれもホームセンターで「リベットピン」(1本数十円程度)なるものを購入しました。5センチくらいあって長すぎるので、グラインダーで1,5センチほどにカットしました。合成樹脂だとフルードで溶解する可能性があるので、金属がいいと思います。

今回のいじくりで一番の難関は、純正ホース外しでした。アルファお得意のカシメバンドが使われているのですが、これがエアダクトや冷却系に使われているパッチン式とは違い、つなぎ目のない金属リングの一部を湾曲させてかしめるタイプなのです。試しにマイナスドライバーでこじってみたのですが、細い割には頑丈で全く歯が立ちません。無理にこじると差し込み部がタンク本体からポッキリ折れるおそれがありますから、絶対にこじらないようにしましょう。折れたら修復困難で、タンクごと入手しなくてはなりません。で、私は鉄ヤスリでひたすらカシメ部を削ってバンドを切断しました。ドライバドリルを持っている方は、軸付砥石を装着してガーと削ると早いし楽かもしれません。また釘が切断できるくらい強力なニッパーがあれば一発で切断できるでしょう。いずれにしても、力をかけすぎて差し込み部を折らないように十分注意してください。

バンドが外れたら純正ホースを引っこ抜きます。当然、タンクから重力でフルードが漏れるので、素早く指で穴を塞ぎ、作っておいたホース栓を差し込み、ホースバンドで締めます。フルードは塗装や樹脂パーツを侵すおそれがありますから、タンク下付近にはウエスを忘れずに。また手に大量にフルードが付着すると、皮膚の水分と反応して一瞬ですが熱くなります。やけどするほどではありませんが、皮膚の弱い方はゴム手袋をしたほうがいいかもしれません。

外すことを全く考慮していないバンドです。でもここを外すのはよほどのクルマおたくかと…。
栓をした状態です。この部分のパーツ代だけで1000円超えているので、もっとローコストな栓の方法を学びたいなと。

外したクラッチフルードホースに、バイク用タンクを装着します。バイク用のタンクは、ホースの取り回しを良くするため、差し込み部がタンク本体から斜めに出ているものが多く、これだとホースの外径が太いため奥まで差し込めませんし、タンクの設置も困難です。タンクを選ぶ際は、差し込み部が垂直に出ているものにしましょう。ヤフオクだと、「ブレーキ タンク」で検索すると20点ほど見つかるはず。タンク容量は15ccと30ccとに別れるようです。交換時に継ぎ足しの回数が少なくて済むのは30ccのほうですが、小さい方が取り回しは楽ですし、どちらでもいいと思います。

タンクの固定にはどこにでも売っている自在ステーを使いました。直近にボルトがなかったので、画像のボルトにステーを固定し、プライヤーで挟んでグニャリと曲げて位置決めしました。

 

初めに買って失敗したタンクです。ホースが、バンドをかけられる位置まで差し込めませんでした。
買い直したのがこちら。カワサキKX125(オフロードレーサー)のリアブレーキリザーバータンク。

装着できたら、タンクにフルードを入れて終わりです。エアの混入は気にする必要ありません(浮力で上がってきます)。なお、クラッチフルードはブレーキフルードのように高温にならないので、DOT5.1といった高沸点タイプを入れる必要ありません。逆に冒頭に述べたようにゴムを傷める可能性があるので、DOT3や4の汎用性の高いタイプを選んだ方が無難だと思います。私は安いTOYOTA純正ブレーキ・クラッチフルード(DOT規格外)を入れましたが、全くノートラブルです。

タンク内にはほとんど圧がかからないので、ホースと差し込み部の口径が合っていれば漏れる心配はほぼありませんが、念のため定期的に漏れやにじみの確認をしましょう。 

完成後の状態です。なお、汎用ステーは錆びやすいので、ヒマのある方はお好きな色に塗装するのもよろしいかと思います。

画像は初期型TSのものですが、ヒューズボックスがあるので私が取り付けした位置に装着するのは無理だと思います。ジョイントとホースを使ってスペースのある場所までホースを延長しないとなりません。8ミリ径のジョイントを探すのが大変そうです。

V6はタンクの位置と取り回しが異なりますが、ほぼ同じやり方で別体化が可能と思います。

 

セレにもクラッチはありますが、作動はフルードではなくセレオイルによるものと思われます。よって別体化はできませんし、する必要もありません。セレのタンクはご覧のように最初から差し込み部が殺してあります。(金型は一緒なのね)

 

バイク用タンクは、一見するとただの蓋付容器で、何か他のもので代用できそうにも見えます。しかし、蓋の裏側に細工があり、これで内圧の調整をしているようです。私が装着したものには、画像のようにエアの入った収縮するゴム製ダイアフラム(?)が付いていました。

 

※お知らせ

栓に使った耐熱・耐油ゴムホースがあと95センチ残っていますので、先着約19名様に5センチにカットして差し上げます。120円切手を送っていただければ、封書で郵送します。ご希望の方はメールください。なお、専用ホースではないため、長期間の使用に耐える保証はありません(メーカーHPでは一応グリコール系には対応とのこと)。自己責任においての使用をお願いします。(※5センチ以上必要な方は長さを指定してください。その際、重さによって郵送料が上がることがあります。)

vredさんの147クラッチフルードタンク別体化DIY

 タンクがあっさり見つかったこともあり、移設自体は簡単にできました。栓のホースは頂いたもの、ホースバンドはオールステンのもの(高っ!)で先っぽにはM8のボルトを切ったものを使用しました。タンクのステーはステンの汎用ステーを切って曲げてねじりました。写真では前に傾いている様に見えますが、実際にも傾いてます(汗
 タンクからの漏れは無かったのですが、最悪なことにブリーダープラグから漏れがありました。クラッチを踏み込むとブリーダーから少しずつ湧いてくる感じです。結局はホース差し込み部の2つあるOリングの内1つが劣化して漏れていたようで、Oリング交換でなんとか漏れは収まったようです。と同時にキュッキュ鳴っていた音も止まったので、Oリングが原因で鳴っていたようですね。

 

(以上vredさんからいただいた情報です。)

参考ですが、vredさんが使われたフルードはATEのブルーレーシング。やはりこのフルードはゴム膨潤性が高いようです。アルファのクラッチには使用不可と断言しちゃいます。

vredさんは増設タンクを純正タンクと共締めにされました。フルードタンクは147と156とでは全く違うんですね。

共締め部を上から見た状態です。肉厚のワッシャをかませたみたいですね。関係ないけど赤いコードはアーシングかな?

横から見た状態。増設タンクはバイク用のブレンボ(!)40ml新品だそうです。う〜ん、リッチ。