いじくり時間 2〜3時間
使用工具 13ミリストレートメガネ、15ミリスパナ、ピストン戻しツール、鳴き止めグリス、ブレーキ用ラバーグリス
難易度 AAA
難易度を3Aにしたのは、フロントパッドの交換と比べ、優に3倍は難しいからです。また、ピストンを押し戻すための専用ツールも絶対必要で、少しでも自信のない方はプロに任せることを強くお勧めします。
なお、毎度のお願いで恐縮ですが、ここを読んでDIYされる方は自己の全責任において作業してください。私はブレーキパッド交換のDIYを勧奨しているわけではありません。
 
さて、リアパッド交換は、フロント側とかなり勝手が違います。キャリパーの製造メーカーが前後で異なるため、構造やボルトのサイズがかなり違い、フロントをやったことのある方は結構戸惑うことでしょう。
 
私は今回の交換作業でえらい目にあい、写真を撮るのを一部失念しました。ここを読む前に、リンクしているDさんの「イカモノ156」のページを必ず読んでください。→こちら←
 
画像は左後輪側です。
上のキャリパーを裏側から撮影したものです。
キャリパーの固定ボルトは、15ミリのスライドピンの中に、13ミリのボルトが入っていくという変わった構造です(意味わかります?)。13ミリだけ回すと、当然供回りしてしまいますので、15ミリの方をスパナで固定しないと緩みません。画像は「イカモノ‥」をご参照ください。撮り忘れました。
 
さてさて、この13ミリボルトの外しが第一ハードルです。
結構きつく締まっている上、なぜかボルトの頭が薄い(厚みがない)ので、通常のラチェットやメガネではなめてしまうのです。私は、はじめ角度のついたメガネを使い、思いっきり力を入れた瞬間にレンチが外れ、手の甲をショックの取付ボルトにイヤというほどぶつけ、軍手が真っ赤になりました。13ミリのストレートメガネは絶対必要です。精度の高い、イイモノを買ってください。前もって浸透潤滑剤をスプレーし、数分放置しておくと緩みやすくなります。(ローターにかからないよう注意!)
 
上がストレート、下が通常の角度付きです。工具はイイモノを使いたいですね。高いのにはキチンとした理由があります。
ピストンです。今回コイツにこっぴどくやられました。
156のリアブレーキは、もっとも一般的な「ディスクブレーキそのものがサイドブレーキを兼ねるタイプ」です。つまり、ブレーキペダルを踏んだときと、サイドブレーキレバーを引いたときとで、リアブレーキはほぼ同じ動きをするわけです。
古いパッドを外したら、厚みのある新品パッドを入れるために、飛び出ているこのピストンを戻さなくてはなりません。単に力で押し戻せばいいフロントと異なり、このサイドブレーキ兼用タイプピストンは、回転させながらでないと戻ってくれません。オート○カニック誌等を読むと、「専用ツールが無くとも、ラジオペンチを使えばOK」とあります。素直(?)な私はこれを信じて専用ツールを準備せずに作業を続けてしまいました。
ところがどっこい、ラジペンをピストンの凹部に填めて力を込めると、何とか回ることは回るのですが、ピストンはちっとも戻ってくれません。これが最難関の第二ハードルです。汗だくになって数十回転回したものの、1ミリたりと戻った様子はありません。困り果てた私は、ウェブ上に助けを求めようとパソコンの電源を入れると‥‥、なんと、折り悪く光ケーブル断絶によりネットにつながらず! とほほ、仕方なく買ったアレーゼのサービスに電話してみましたが、この日は5月5日こどもの日。やっているはずもありません。もしかしたら、とオートメカニック誌編集部にも電話してみましたがここも誰も出ず。自転車で近所の整備工場を回ってみましたが、やっぱり全部休み。
再びDIY開始。本には「時計回りに‥‥」とありますが、イタ車はもしかして逆? と思い、試しに反時計回りに回してみると、ピストンが面白いように飛び出してきます。これではイカンと再度時計回りに回しますが、依然として戻らず。始めより飛び出してしまっているので、新品パッドはおろか、古いパッドすら装着不可能の状態です。半ば自暴自棄になって再度反時計回りに回してみました。すると‥‥‥
コロンと、ピストンが地面に落ちて、ブレーキフルードがダラ〜っと血のように流れ出てきました。慌ててピストンを元に戻そうとしましたが後の祭り。全然入ってくれません。
ピストンの中心部には雌ねじを切ったシャフトがあって、キャリパー側の雄ねじに入っていくようになっています。シャフトはピストンに直付けではなくフローティングマウントであり、そのため供回りして入っていかないようです。
やはり押し戻しツールが必要と判断し、自転車で近所のカー用品店に行きました。この店に、半年ほど前、このツールを売っていたのを覚えていたのです。ところが、店中探したのですが、売り切れで置いてませんでした。
万策尽きたと諦め、ジャッキアップしたままの156を我が家に残し、こどもたちを連れて近くの公園に遊びに行きました。こどもと野球のまねごとをしていたとき、突然ひらめきました。「そうだ、ツール作ればいいんだ!」
で、完成したのがコレ。角形ワッシャにドリルで対角線上に2カ所穴を空け、そこに3ミリ径の頭が丸いヘックスボルトをボルトオン(間隔約34ミリ)。中央の穴に短い10ミリボルトをナットでガッチリ締め付け、そこに10ミリのT字レンチをはめて大量の瞬間接着剤で固定。果たして上手くいくでしょうか?
頭の部分です。突貫工事で作ったので雑ですが、結果としてこいつが助けてくれました。
 
この自作スペシャルツールを使って、再々度ピストン戻しにチャレンジ。ラジペンよりはるかに力が入りますが、それでもやっぱりピストンは入っていきません。縦方向の力が足りないのかもしれません。最後の手段で、ブレーキホースをショックにクランプしている部分を外し(ロックピンが細くて紛失しやすいので注意)、キャリパー本体をトレーリングリンクに押し当て、上半身全ての体重を掛けてねじ込んでみると‥‥!!! わずかずつですがピストンが入っていくではありませんか! 
こうして、苦労の末ピストンを押し戻し、新品パッドを装着することができました。当然ながら、フルードが大量に漏れたのでエア抜きと同じ作業をしなくてはなりませんでした。
結論として、かなり強い縦方向の入力がないとピストン内のシャフトが供回りしてしまって戻すことができません。ボブ・サップでも連れて来ない限りラジペンでの作業はムリで、専用ツール(5〜6000円以上)の出費等を考えると、プロに任せた方が無難では? と思います。結局私はこの日朝の8時ころ作業を始め、終わったのは6時近かったです。
外したノーマルのルーカス製パッドです。ご覧のとおり、鳴き止めのための左右の斜めカットが凄まじいです。ローターとの接触面積はその分減るわけで、制動性能の点からみれば百害あって一利なしですなあ。しかも、このパッドは半分以上摩耗してますから、新品状態だとこれよりかなり接触面積が小さいことになります。
今回取り付けたSHP(旧apロッキード)のタイプWXパッドです。上のノーマルと比べれば一目瞭然ですが、接触面積を有効にとるため斜めのカットが全くありません。鳴きは確かにイヤなものですが、クルマにとってブレーキ性能以上に大切なものがあるでしょうか?
画像の品は一例ですが、必ず必ずブレーキ専用のラバーグリースを塗布してスライドピンボルトとシールゴムを組み付けてください。塗布前に、古いグリースやダストを洗浄するのは言うまでもありませんね。
やや蛇足ですが、ブレーキダストの所為で作業後2日くらい鼻クソが真っ黒でした。マスクをして作業することをお勧めします。