軽量化プロジェクト
その壱 黎明編

 「軽量化に勝るチューンなし」  とは競技の世界でよく聞く言葉です。実際、車体が軽くなれば、クルマの前後左右全ての方向に対する動きが速くなり、おまけに燃費も向上。唯一悪化するとしたら乗り心地くらいのものでしょうか。(バネ上のみ軽くなると、相対的にはバネ下が重くなったのと同じ状態になるので、わずかですが乗り心地は悪化します。)

軽量化には大きく二つあって、

   1 軽量素材で作られた部品に交換する

   2 要らない部品をとっぱずす

方法とがあります。往々にして1の手法は資金が潤沢でないとできません。チタンやカーボン等の軽量素材はみな高価なのです。ですが外すだけなら金はいりません。私はこの方法でできるところまでやってみようと思います。

 

※156TSの車体重量については、取説1285kg、カタログ(2002春)1300kgとあるところ、装備重量と思われるカタログの1300kgを採ることとします。また部品の計量は、1キロ前後のものはキッチン用の計り、それ以上のものは体重計によって行っていますので、若干の誤差はあるかと思います。

 

プロジェクト指令その1 「テンパータイヤを外せ」

 前のクルマは6年半乗って2,8万キロしか走りませんでしたが、この間1度もパンクせずに済みました。某タイヤメーカーのデータによりますと、乗用車の平均パンク回数は、5〜6万キロに1回とのことですから、運が良かったというわけではなさそうです。このクルマのテンパー(応急)タイヤは、一度もトランク下のスペースから出ることなく、次のオーナーにもらわれていきました。そのまま解体屋さんへ行くのかもしれません。もったいない話です。156になって走行距離は増えましたが、それでも年間6000キロ行くか行かないかのペースでしょう。都内ですから悪路を走ることは滅多にありませんし、先のメーカーのデータからすれば、理論上パンクするのは8〜10年後になります。となれば、決して軽くないテンパータイヤを載せておくのは大いなるムダ。もしパンクしても左のパンク修理剤を使えば、バーストやサイドウォールの裂け以外、穴が塞がると同時に空気も入ってすぐに走行できます。使用時にはジャッキアップの必要がないので、車載のジャッキセットもいりません。これも一緒に下ろしました。

 成果

  テンパータイヤ −11,0kg

  ジャッキケース(ジャッキ、タイヤレンチ等含む) −3,0kg

  ホルツパンク修理剤 +0,4kg

  現在車体重量 1286,4kg

 

※インチアップして45扁平等を履いてる場合、落石や路面工事の段差等(ときにはキャッツアイでも)を踏むと、リムが変形して空気抜けを起こす確率が高くなっています。このような場合も修理剤は修復を行うことができません。いずれにしても、修理剤はテンパータイヤの完全な代用を果たすことはできませんので、テンパーを下ろす際はリスクを覚悟の上で行ってください。

 

プロジェクト指令その2 「トランクを拡大せよ」

 テンパータイヤとジャッキケースを下ろしたところ、これらがトランクフロアボードの支えになっていたため、ボードがベコベコになってしまいました。ベニヤか何かで支えを作ろうと考えたのですが、途中で面倒になってきました。「そうだ、このボードもはずしちゃえ!」となり、前回外し忘れたテンパータイヤ取付部のスペーサーゴムともども外してしまいました。すると思わぬ効果が! 空になったテンパータイヤのスペースとトランクがつながったことで、トランク容量が大幅アップです。テンパー収納部のスペースってこんなに広かったんですね。一石二鳥、やり。

 成果

   トランクフロアボード(ボルト含む) −3,2kg

スペーサーゴム −0,13kg

累計軽量化 −16,93kg  

現在車体重量 1283,07kg

 

プロジェクト指令その3 「ボンネットを軽くせよ」

 クルマのボンネットって実はかなりの重量物です。しかもクルマの前部でかつその一番上にあるわけですから、これを軽量化できればコーナリング性能の向上に大きな期待が持てます。カーボンやFRPのボンネットは、喉から手が出るくらいほしいのですが、塗装代まで考えると高嶺の花です。(ロッソのボディーにカーボン剥きだしって…、カッコ悪い。Tanaさんごめんなさい)

 でもノーマルのボンネットだって軽くできます。裏に貼り付けてあるインシュレーター(遮音材)を外せばいいのです。多少エンジン音がうるさくなるかもしれませんが、156はスポーツセダンとしては、静かすぎるくらいですから、返っていいかも? ロックピンを外し始めると、やたらと数が多い上に、とにかく固い。素手では無理なので、マイナスドライバーでこじっていたら、1個エンジンルームに落としてしまいました。

 ようやくロックピンを外し終わり、インシュレーターを手にとって見ると……、ガーン! すんごく薄くて軽い。まるで厚紙でできてるみたいです。3kgくらいはあると思ったのに…、ガッカリ。ちなみにノーマルボンネットの軽量化にはもう一つ方法があって、裏側の桁を全て外してしまう猛者もいるようです。ただし強度を失ってペラペラになり、ボンネットピンをつけないと走行風で開いちゃうそうですから、ちょっと実用向きではないですね。

 気を取り直して、エンジンルームに落ちたロックピンの捜索開始です。どうやら左側、エアクリボックスの真下辺りにあるようなのですが、どうしても手が届きません。樹脂なので磁石も使えませんから、仕方なくジャッキアップしてアンダーカバーを外すハメに。おろっ? そういえばこのアンダーカバーもいらないな。外しちゃえ。こうしてアンダーカバーは、現在ウチのベランダに飾ってあります。とっても見苦しい置物です。

※2000キロほど走行しましたが、アンダーカバーを外したことによるトラブルは今のところありません。真夏の渋滞路も経験しましたが、水温はかえって下がったようにも思います。ただし、エアの吸入口位置が低いため、水のエアクリ吸い込みが心配と言えば心配です。深い水たまりが連続するような悪路を走る方は、外さず装着しておくことをお勧めします。

 成果

インシュレーター −0,95kg

アンダーカバー −2,7kg

累計軽量化 −20,58kg

現在車体重量 1279,42kg

 

プロジェクト指令その4 「室内を探せ」

 インシュレーターを外してから初めてのドライブ。予想に反してエンジン音に何の変化もありません。車外で聞く音も全く同じです。まあ、あれほど軽くて薄っぺらなインシュレーターですから、とても防音の役目を果たしていたとは思えません。インシュレーターというよりは、見栄えを考えたボンネットの内張ですね。意味ないですからみなさんもガンガン外してください。(←軽いだけに外しても意味ありません)

 〜後日確認のため、会社にあるアリストとセドリック(いずれも現行型)それに旧型ブルーバードのインシュレーターを見てみました。アリストとセドはどちらもほとんど同じ袋状になっており、中の層には触ると「ジャリッ」と音がする、まるで活性炭のような感触の吸音材とおぼしきものがたっぷり入っており、なかなか吸音効果が高そうでした。厚みは156のそれと比べると5〜6倍はあるかと思います。一方ブルは、この2車と比べれば半分程度の厚さなれど、やはり袋状になっていて同様の吸音材入っていました。やはり156のは、インシュレーターではなく、ただの内張にすぎないようです。

 ドライブしながら次に思い至ったのが室内です。とりあえず目に付いたのがセンターコンソールの灰皿。クルマではたばこ吸わないので必要ありません。シガーライターもいりませんね。でも後席の灰皿は、外しちゃうとぽっかり穴が開くので美観上外せません。後席中央のヘッドレストは、後ろに大人3人が乗ることは2年に1回あるかないかですから、これも要らないっと。再び視線を近くに戻すと、運転席の肘掛け! これ、上げても下げてもサイド引いたときに肘に当たるので、すごくうっとうしかったのです。5MTには必要のない装備では? ところがこの外し方がなかなかわからず、えらい苦労しました。

※肘掛けの外し方

 肘掛け本体の取付側をグッとめくると、中央に金属製ロッドが見えます。さらによく見ますと、このロッド円周上に溝が切ってあり、そこに針金ようの環型ロックピンがはまっています。ラジオペンチか細いマイナスドライバーでこのロックピンを引き抜いてやれば、スッと肘掛けが外れます。なお、ロックピンは端末部ではなく、弧の部分を引かないと延びてしまって再使用不可になります。肘掛け自体は、縫いぐるみみたいなもので軽いのですが、取付のロッドが結構頑丈で重く、思ったより効果ありました。なお、ロッドを外した後のシートに、かぎ裂きのみっともない跡が残ってしまいます。私は直径7センチくらいの黒い円形の硬質ゴム(机の脚にはめるものとしてホームセンターで売ってたのを、底だけ切り抜いた)に3カ所穴を開け、取付ボルトで留めてます。

成果

灰皿&シガーライター −0,08kg

リヤ中央ヘッドレスト −0,75kg

肘掛け −0,92kg

累計軽量化 −22,33kg

現在車体重量 1277,67kg

 

プロジェクト指令その5 「重箱の隅をつつけ」

 156で遊びに行った公園で息子たちがザリガニ釣りをしている間、暇つぶしにボンネットを開けてのんびり眺めてました。すると、ん? と気になったのが写真のグリル内の遮風板。なぜか向かって右上の四角形だけ切り抜かれていません。何か理由があるのかと裏を覗いてみましたが、オープナーハンドルがあるだけで、他には何もありませんでした。ならこの四角形を切り取れば、冷却性が上がるかなと思ったところで、空から天啓が下りました。「そのもの、板ごと外すが良い」

 そうです、そっくり外してしまえば、エンジンルームの冷却性と軽量化との正に一石二鳥です。で、外してみると、ボンネットロックのキャッチ部がどーんとあらわになってしまいました。つまりはこの遮風板、このキャッチ部をビジュアル的に隠すのとともに、雨や風から守るためにあったようです。(この辺の対策は、さすが周りを海に囲まれたイタリアです。)ボンネットを閉めてみると、アルファマークに隠されて無粋なキャッチ部は全然見えません。これなら美観上問題ありませんし、キャッチ部はときおりグリスアップしてやれば、さび付くこともないでしょう。

成果

グリル裏遮風板 −0,09kg

累計軽量化 −22,42kg

現在車体重量 1277,58kg

 

プロジェクト指令その6 「バネ下は15倍の価値あり」

 ドタバタと空荷のトラックのごとく跳ねる足の原因は、重い純正アロイホイールにあるらしい。何とかしたいが、金がない。そうだ、ヤフーオークションがあるではないか! すると絶妙なタイミングで、レイズ ボルクレーシングTE37の16インチが出品されてるでないの!(←国沢親分風)

これは何が何でもゲットせにゃならんと、競争相手のやる気をなくすため、いきなり払えそうもない金額をドーンと打ってでた。(注 反則です) そのせいかどうか、格安の値段(中古とはいえ、約1本分の値段で4本)で手に入れることができました。出品者の方、どーもありがとうございました。詳しいインプレはいじくり部屋にありますが、一言で言えば、サイからトムソンガゼルに乗り換えたような感じです。最高。

成果

ノーマルホイール 9,4kg/本

レイズTE37 6,0kg/本

バネ下軽量化 −13,6kg

累計軽量化 −36,02kg

現在車体重量 1263,98kg

 

プロジェクト指令その7 「虚飾を廃せ」

 ハッキリ言ってコレを外すのは少なからず抵抗ありました。でも外してみると何てことありません。どうせ他人に見せる機会なんて1年に1回もないでしょうから。そうです、TSエンジンのヘッドカバーです。重量的には大したことありませんが、冷却性はわずかとはいえ向上するでしょうし、プラグとインジェクションのアーシングケーブルをショートカットして短くすることもできました。軽量化って意外な副産物を生むものですね。

 成果

エンジンヘッドカバー(ボルト込み) −1,05kg

累計軽量化 −37,07kg

現在車体重量 1262,93kg

ちょっとビックリするくらい広くなります。でも見た目は……?
とっぱずし後。やはり安っぽく見えますかね?
アンダーカバーです。結構でかくて、置き場に困ります。
見た目に関しては、素直に17インチに負けることを認めます。でも軽いってホントいいですよ。
お部屋のオシャレなインテリアに…、なりませんね。